時効の援用権者・詐害行為の受益者
詐害行為の受益者は、取消債権者の被保全債権の消滅時効を援用できる!債権が消えれば取消権も消えるから直接利益あり
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事案の概要
争点
判旨
【原文】
詐害行為の受益者は、詐害行為取消権行使の直接の相手方とされている上、これが行使されると債権者との間で詐害行為が取り消され、同行為によって得ていた利益を失う関係にあり、その反面、詐害行為取消権を行使する債権者の債権が消滅すれば右の利益喪失を免れることができる地位にあるから、右債権者の債権の消滅によって直接利益を受ける者に当たり、右債権について消滅時効を援用することができるものと解するのが相当である。
判決
関連法令の解説
時効は当事者が援用しなければ裁判所がこれによって裁判をすることができないと定めています。平成29年改正後は「消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む」と明文化されました。本判決はこの改正前の判例であり、「時効によって直接の利益を受ける者」が援用できるという判例法理を示したもので、この法理が改正条文の根拠となっています。
民法424条(詐害行為取消権)
債権者は、債務者が債権者を害することを知って行った法律行為の取消しを裁判所に請求できると定めています。本判決では、受益者に対してこの取消権が行使された場合、受益者が被保全債権の消滅時効を援用する利益があるとして、その援用が認められました。
身近な例え
ざっくりまとめ
そこでCが「ちょっと待って、そもそもAのBに対する債権、もう時効が完成してませんか?私はその消滅時効を援用します」と主張したんだ。
CはAB間の契約の当事者でも何でもないのに、Aの債権の時効を援用できるの?というのがこの判例のポイントだよ。
試験対策ポイント
援用できる根拠:被保全債権が消滅すれば詐害行為取消権も行使できなくなり、受益者が得た利益を守ることができるという直接的な利益があるから
本判決の判例法理は平成29年改正で民法145条に明文化された(「権利の消滅について正当な利益を有する者」として受益者が含まれる)
注意:「反射的な利益にすぎない」として援用が認められない例→後順位抵当権者(最判平11.10.21)は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない
一般債権者(ライバルの債権者)も直接の利益がないため、原則として他人の時効を援用できない
関連法令
関連判例
消滅時効の援用権の代位行使
物上保証人は被担保債権の消滅時効を援用できる(直接利益を受ける者にあたるため) 物上保証人の援用権は平成29年改正で民法145条に明文化 債権者代位による時効援用:①債務者が無資力、②自己の債権保全に必要な限度、という要件のもとで認められる 時効援用権は一身専属的な権利ではないため債権者代位権の対象となりうる 対比:後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない(最判平11.10.21)→順位上昇は反射的利益にすぎないため 本判決は1つの判決で時効援用の2つの重要論点をカバーしている点を押さえること
時効完成後の債務の承認
時効完成後に債務を承認した場合、債務者はその後に消滅時効を援用できない 「時効完成を知らなかった」という事情は関係ない。知らなくても援用は許されない 法的根拠は民法1条2項の信義則(信義誠実の原則) 注意:時効完成前の承認は時効の更新(民法152条・時効のリセット)の問題であり、本判決とは場面が異なる。混同しないこと 試験では「時効完成の事実を知らなかった場合でも援用できない」という部分がひっかけとして出やすい
相続回復請求権
民法884条は共同相続人間にも適用される(大法廷判決) 適用の前提:自己の相続分を超える部分について他の共同相続人の相続権を否定して占有管理している場合 消滅時効の援用には善意かつ合理的事由(他に共同相続人がいることを知らず、かつ知らなかったことに合理的事由がある)が必要 立証責任は消滅時効を援用する側(時効の恩恵を受けたい表見相続人側)にある(最判平11.7.19) 実務上は消滅時効が認められるケースはほとんどなく、884条の機能は限定的とされている 消滅時効の起算点:5年(侵害を知った時から)、20年(相続開始の時から)の2段階構造を押さえること
離婚に伴う財産分与の詐害行為該当性
債務超過という一事だけでは詐害行為にならない。特段の事情(不相当に過大 かつ 財産分与に仮託した財産処分)が必要 詐害行為として取り消せるのは不相当に過大な部分に限られ、財産分与全体が取り消されるわけではない 注意:相続放棄は身分行為として詐害行為の対象にならないが、遺産分割協議は財産権を目的とする行為として対象となる(最判平11.6.11)との対比を押さえること 離婚慰謝料の合意については別途基準があり、負担すべき損害賠償額を超えた部分が詐害行為の対象となる(最判平12.3.9) 民法424条2項「財産権を目的としない行為には適用しない」との関係で、財産分与の身分行為的性質と財産的性質の両面を理解しておくこと
特定債権保全のための詐害行為取消権
詐害行為取消権の被保全債権の原則は金銭債権 特定物引渡請求権でも、目的物が処分されて無資力になった場合は被保全債権になりうる(例外) 理由:特定物債権も最終的には損害賠償債権(金銭債権)に転化しうるから、一般財産による担保が必要な点は金銭債権と同じ 大法廷判決である点に注目(小法廷ではなく大法廷が判断した重要判例) 不動産の二重譲渡で第一買主が詐害行為取消権を使うケースの典型例(登記を備えられなかった買主が詐害行為取消で対抗するルート) 対比:単純な二重譲渡で第二買主が登記を備えた場合、第一買主は原則として第二の売買を詐害行為として取り消せない(本判決は無資力要件が満たされた場合に限り例外を認めた)
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