消滅時効の援用権の代位行使
物上保証人も消滅時効を援用できる!さらに債権者は債務者に代位して他の債権者への債務の時効を援用できる!
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事案の概要
争点
判旨
判決
関連法令の解説
時効は当事者が援用しなければ裁判所がこれによって裁判をすることができないと定めています。本判決は「消滅時効を援用しうる者は、権利の時効消滅によって直接利益を受ける者に限られる」という基準を示した上で、物上保証人もこれに該当すると判示しました。平成29年改正で「物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む」と明文化されています。
民法423条1項(債権者代位権)
債権者は自己の債権を保全するために債務者に属する権利を行使することができると定めています。本判決は、時効援用権が一身専属的な権利ではなく債権者代位権の目的となりうることを認め、①債務者が無資力、②自己の債権を保全するのに必要な限度という要件のもとで債権者による代位援用を認めました。
身近な例え
ざっくりまとめ
①物上保証人の時効援用
「友達Bの借金の担保として、自分の家に抵当権を設定してあげた(物上保証人)。その借金の時効が完成したけど、自分で時効を主張していい?」
→「できる!」被担保債権が消えれば自分が直接得をする立場だから自分の家の抵当権も消えるんだ。
②債権者代位による時効援用
「AはBに100万円貸している。BはCにも借金があって、その借金の時効は完成しているのに、Bは援用しないままCに払い続けて財産がどんどん減っている。AはBに代わってCへの借金の時効を援用できるの?」
→「できる!」BがCへの支払いを続けて財産が減ればAはBから回収できなくなる。だからAは債権者代位権を使ってBがやるべきことをBの代わりにできるんだ。ただしBが無資力で、Aの債権保全に必要な限度での話。
試験対策ポイント
物上保証人の援用権は平成29年改正で民法145条に明文化
債権者代位による時効援用:①債務者が無資力、②自己の債権保全に必要な限度、という要件のもとで認められる
時効援用権は一身専属的な権利ではないため債権者代位権の対象となりうる
対比:後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない(最判平11.10.21)→順位上昇は反射的利益にすぎないため
本判決は1つの判決で時効援用の2つの重要論点をカバーしている点を押さえること
関連法令
関連判例
時効の援用権者・詐害行為の受益者
詐害行為の受益者は、取消債権者の被保全債権の消滅時効を援用することができる 援用できる根拠:被保全債権が消滅すれば詐害行為取消権も行使できなくなり、受益者が得た利益を守ることができるという直接的な利益があるから 本判決の判例法理は平成29年改正で民法145条に明文化された(「権利の消滅について正当な利益を有する者」として受益者が含まれる) 注意:「反射的な利益にすぎない」として援用が認められない例→後順位抵当権者(最判平11.10.21)は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない 一般債権者(ライバルの債権者)も直接の利益がないため、原則として他人の時効を援用できない
相続回復請求権
民法884条は共同相続人間にも適用される(大法廷判決) 適用の前提:自己の相続分を超える部分について他の共同相続人の相続権を否定して占有管理している場合 消滅時効の援用には善意かつ合理的事由(他に共同相続人がいることを知らず、かつ知らなかったことに合理的事由がある)が必要 立証責任は消滅時効を援用する側(時効の恩恵を受けたい表見相続人側)にある(最判平11.7.19) 実務上は消滅時効が認められるケースはほとんどなく、884条の機能は限定的とされている 消滅時効の起算点:5年(侵害を知った時から)、20年(相続開始の時から)の2段階構造を押さえること
時効完成後の債務の承認
時効完成後に債務を承認した場合、債務者はその後に消滅時効を援用できない 「時効完成を知らなかった」という事情は関係ない。知らなくても援用は許されない 法的根拠は民法1条2項の信義則(信義誠実の原則) 注意:時効完成前の承認は時効の更新(民法152条・時効のリセット)の問題であり、本判決とは場面が異なる。混同しないこと 試験では「時効完成の事実を知らなかった場合でも援用できない」という部分がひっかけとして出やすい
抵当権に基づく妨害排除請求事件
抵当権は換価価値(交換価値)を把握する権利であり、原則として占有・使用収益に干渉できない 不法占拠により競売が妨害され交換価値の実現が困難になる場合は抵当権の侵害と評価できる 抵当権者は「所有者が不動産を適切に維持管理するよう求める請求権」を保全するため、民法423条の法意に従って所有者の妨害排除請求権を代位行使できる(直接適用ではなく転用) 代位行使の場合、抵当権者は不法占有者に対して直接自己への明渡しを求めることができる 注意:本判決は**大法廷判決(最大判)**で、平成3年判例を変更した点が重要 その後の最判平17.3.10は、一定の要件下で抵当権に基づく直接の妨害排除請求(代位構成なし)も認め、本判決を補完している
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