特定債権保全のための詐害行為取消権
特定物の引渡しを求める権利も、債務者の処分で無資力になった場合は詐害行為として取り消せる!
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事案の概要
争点
判旨
【原文】
一 特定物引渡請求権を有する者も、その目的物を債務者が処分することにより無資力となつた場合には、右処分行為を詐害行為として取り消すことができるものと解すべきである。
・・・
かかる債権も、窮極において損害賠償債権に変じうるのであるから、債務者の一般財産により担保されなければならないことは、金銭債権と同様だからである。
判決
関連法令の解説
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求できると定めています。詐害行為取消権の被保全債権は原則として金銭債権でなければなりませんが、本判決は特定物引渡請求権も例外的に被保全債権となりうると判示しました。平成29年改正後の民法424条4項では強制執行により実現できない債権は被保全債権にならないと明文化されており、本判決の趣旨はこの解釈の中で維持されています。
身近な例え
ざっくりまとめ
まず、3つのステップで理解しよう。①特定物の引渡しを求める権利は、もともとはお金の請求権ではない。②でも、目的物が処分されてしまえば、履行不能になり損害賠償請求権(=お金の請求権)に転化する。③だから「最終的にはお金の権利になりうる」という点で、通常の金銭債権と同じく債務者の一般財産で担保される必要がある。
結論:特定物引渡請求権を持つ者でも、債務者がその物を処分して無資力になった場合、詐害行為として取り消せるんだ。大法廷判決という重みも押さえておきたい。
試験対策ポイント
特定物引渡請求権でも、目的物が処分されて無資力になった場合は被保全債権になりうる(例外)
理由:特定物債権も最終的には損害賠償債権(金銭債権)に転化しうるから、一般財産による担保が必要な点は金銭債権と同じ
大法廷判決である点に注目(小法廷ではなく大法廷が判断した重要判例)
不動産の二重譲渡で第一買主が詐害行為取消権を使うケースの典型例(登記を備えられなかった買主が詐害行為取消で対抗するルート)
対比:単純な二重譲渡で第二買主が登記を備えた場合、第一買主は原則として第二の売買を詐害行為として取り消せない(本判決は無資力要件が満たされた場合に限り例外を認めた)
関連法令
関連判例
離婚に伴う財産分与の詐害行為該当性
債務超過という一事だけでは詐害行為にならない。特段の事情(不相当に過大 かつ 財産分与に仮託した財産処分)が必要 詐害行為として取り消せるのは不相当に過大な部分に限られ、財産分与全体が取り消されるわけではない 注意:相続放棄は身分行為として詐害行為の対象にならないが、遺産分割協議は財産権を目的とする行為として対象となる(最判平11.6.11)との対比を押さえること 離婚慰謝料の合意については別途基準があり、負担すべき損害賠償額を超えた部分が詐害行為の対象となる(最判平12.3.9) 民法424条2項「財産権を目的としない行為には適用しない」との関係で、財産分与の身分行為的性質と財産的性質の両面を理解しておくこと
時効の援用権者・詐害行為の受益者
詐害行為の受益者は、取消債権者の被保全債権の消滅時効を援用することができる 援用できる根拠:被保全債権が消滅すれば詐害行為取消権も行使できなくなり、受益者が得た利益を守ることができるという直接的な利益があるから 本判決の判例法理は平成29年改正で民法145条に明文化された(「権利の消滅について正当な利益を有する者」として受益者が含まれる) 注意:「反射的な利益にすぎない」として援用が認められない例→後順位抵当権者(最判平11.10.21)は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない 一般債権者(ライバルの債権者)も直接の利益がないため、原則として他人の時効を援用できない
転用物訴権
転用物訴権(不当利得返還請求)が認められるには、建物所有者が対価関係なしに(無償で)利益を受けた場合に限定される 賃貸借契約において賃貸人が権利金免除・家賃減額など何らかの対価を負担していれば、利益に「法律上の原因あり」として請求は認められない 注意:従来の「ブルドーザー事件」(最判昭45.7.16)で広く認められていた転用物訴権を、本判例が実質的に制限・変更した 請求が認められる要件:①賃借人への請負代金請求権が無資力により事実上無価値、②所有者が対価関係なしに利益を受けていること 本判例は小法廷判決であるが、大法廷判決の変更に相当する重要判例
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