ロゴ行政書士になる子ちゃん
A行政法国家賠償・損失補償

児童養護施設事件

最高裁判所2007-01-25最判平19.1.25
公権力の行使児童養護施設国家賠償法1条1項使用者責任委託民法715条

民間施設の職員による養育行為も公権力の行使!国賠責任が成立する場面では民法の使用者責任は排除される

図解でわかる

判例図解

タップで拡大

なる子ちゃん

事案の概要

都道府県の入所措置により民間の社会福祉法人が運営する児童養護施設に入所した児童が、施設職員の養育行為によって損害を受けました。被害者側は社会福祉法人(使用者)に対して民法715条の使用者責任を問うとともに、都道府県に対しても責任を追及しました。民間法人の職員の行為が国家賠償法上の「公権力の行使」にあたるか、またその場合に民法の使用者責任も並行して問えるかどうかが争われた事件です。
争点

争点

民間の社会福祉法人が運営する児童養護施設の職員による養育行為が国家賠償法上の「公権力の行使」にあたるか、またその場合に施設の運営法人(使用者)は民法715条の使用者責任を並行して負うか、というのがこの事件の争点です。
判旨

判旨

まず1点目について。児童養護施設への入所措置は都道府県が行う公的な判断であり、施設職員の養育行為はその委託を受けて行う公務の一環です。たとえ運営主体が民間の社会福祉法人であっても、実態として国の仕事を代わりにやっている以上、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」にあたると判断されました。
次に2点目について。国家賠償法は民法の特別法、つまり民法よりも優先して適用されるルールです。国家賠償責任が成立する場面では、民法715条の使用者責任(雇い主が従業員の不法行為に対して負う責任)を別途重ねて問うことはできません(原文) 

 国又は公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えた場合であっても,当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして国又は公共団体が被害者に対して同項に基づく損害賠償責任を負う場合には,被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないのみならず,使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないと解するのが相当である。
判決

判決

職員の養育行為は「公権力の行使」にあたり、国家賠償法1条1項の賠償責任が成立する。この場合、社会福祉法人は民法715条の使用者責任を負わないことが確定しました。
関連法令の解説

関連法令の解説

国家賠償法1条1項(公権力の行使と賠償責任):公権力の行使にあたる公務員が職務について故意または過失で違法に他人に損害を与えた場合、国または公共団体が賠償責任を負うと定めています。本件では民間施設職員の行為がこの「公権力の行使」にあたるかが問われました。
民法709条(不法行為)・民法715条(使用者責任):709条は故意・過失による損害賠償責任を定め、715条は使用者が被用者の不法行為について賠償責任を負うと定めています。本件では国賠責任が成立する場合にこれらの民法上の責任を重ねて問えるかが争点となりました。
身近な例え

身近な例え

市から委託されたゴミ収集業者の職員が作業中にミスをした場合、民間企業の従業員でも「市の仕事」をしているから、市が責任を負うのと似た関係です。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

民間の施設の職員がやったことだから、民法で社会福祉法人を訴えればいい」って思うよね。でもこの判例はそうじゃないと言っている。児童養護施設への入所措置は都道府県が行う公的な行為で、民間施設はその委託を受けて公務を代わりにやっているんだよね。だから職員の養育行為も「公権力の行使」にあたる。そして国賠責任が成立する場面では、国賠法が民法の特別法として優先適用されるから、民法715条の使用者責任は重ねて問えない、というのが結論。民間委託=民法適用と短絡的に考えないことが試験のポイントだよ!

試験対策ポイント

運営主体が民間であっても公務の委託を受けていれば「公権力の行使」にあたる。民間法人の職員による行為も国賠法の適用対象となりうる。
国賠責任が成立する場面では民法の使用者責任は排除される。国賠法が民法の特別法として優先されるため、両責任を並行して問うことはできない。

職員個人の民法709条責任も否定される。国賠責任が成立する場合、被用者個人の不法行為責任も問えない点とあわせて整理すること。

注意:「民間だから民法で訴える」という発想は通用しない。委託の実態が公務かどうかによって適用法が決まる点は頻出のひっかけ。

被害者の救済窓口は国または都道府県。国賠法が適用される場合、被害者は社会福祉法人ではなく都道府県等に対して賠償請求することになる点も確認しておくこと。
法令

関連法令

関連判例

関連判例

行政法最高裁判所

スナック事件

不作為も国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に含まれる。積極的な加害行為がなくても賠償責任が生じうる。 違法な不作為が認められるには、法令上の作為義務が存在することが前提。義務の根拠として銃砲刀剣類所持等取締法24条の2第2項が示された点を押さえる。 「危害を及ぼすおそれが著しい状況」という事実認定が義務発生のカギ。どんな状況でも保管義務が生じるわけではなく、具体的な危険性の認識可能性が必要。 注意:「不作為は一切国賠の対象にならない」は誤り。本判例はその反対を示しており、ひっかけとして頻出。 調査義務の懈怠も違法性の根拠となる点も重要。状況を調査すれば危険性を認識できたのに調査しなかった点も義務違反として評価されている。

民法最高裁判所

使用者から被用者への求償

行政法最高裁判所

武蔵野マンション事件

行政指導として寄付を求めること自体は任意性が確保されている限り適法 制裁措置を背景に事実上の強制となっている場合は行政指導の限度を超えた違法な公権力の行使 判断のポイント:①制裁措置の存在、②従わなければ事実上断念せざるを得ない状況、③実際に制裁が実行されていた事実 注意:目的が正当(市民の生活環境保護)で住民の支持があっても、手段が強制的であれば違法 行政手続法32条(行政指導の一般原則・不利益取扱いの禁止)と本判例の法理をセットで理解すること

行政法最高裁判所

消防職員の過失と失火責任法

失火責任法は民法709条の特別法であり、国家賠償法4条の「民法」に含まれる 公務員の失火にも失火責任法は適用される(公務員だからといって除外されない) 国・自治体の賠償責任が認められるには、公務員に**重大な過失(重過失)**が必要 軽過失にとどまる場合は、被害者がどれだけ損害を受けても国・自治体は賠償責任を負わない 試験の文章穴埋め問題で頻出:失火責任法は民法709条の「特則」、国賠法4条の民法に「含まれる」、公務員にも「適用」、重大な過失が「必要」という5つのキーワードを押さえること(令和3年度行政書士試験で出題)

行政法最高裁判所

水俣病の拡大と規制権限の不行使

規制権限の不行使(何もしないこと)も、一定の場合に国家賠償法1条1項の違法にあたる 違法となる基準:権限不行使が著しく合理性を欠く場合(裁量の逸脱・濫用) 違法性判断の3要素:①被害の深刻さ、②原因と排出源の認識可能性、③規制措置の実行可能性 注意:科学的知見が不十分な時点での不行使は違法とならないが、十分な知見が揃った後の放置は違法 規制権限不行使の違法性が争われる判例として、宅建業法の監督処分権限不行使(最判平元.11.24)とも対比して整理すること

📱 アプリのご紹介

行政書士になる子ちゃん

スマホアプリで、いつでもどこでも。行政書士合格を、スキマ時間で。

行政書士試験学習には必須の判例のわかりやすい解説から科目別テキスト、過去問演習、択一演習をスマホでまとめて持ち歩ける学習アプリです。通勤・休憩中に1問だけでも。独学でも仕事と両立しながら、合格を目指せます。

App Storeで無料ダウンロード