第三者に交付された貸付金の返還
第三者へ直接渡した貸付金も原則は借主の利得!でも強迫など特段の事情があれば別
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事案の概要
争点
判旨
【原文】
甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消したが、甲と丙との間には事前に何らの法律上又は事実上の関係はなく、甲が丁の言うままに乙に対して貸付金を丙に給付するように指示したなど判示の事実関係の下においては、乙から甲に対する不当利得返還請求について、甲が右給付によりその価額に相当する利益を受けたとみることはできない。
判決
関連法令の解説
この条文は不当利得の返還義務を定めており、「法律上の原因なく他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益を返還する義務を負う」と規定しています。本件では消費貸借契約が取り消された結果、法律上の原因が消滅し、借主への不当利得返還請求が問題となりました。借主が「現に利益を受けている」かどうかが返還義務の範囲を決める重要な要件です。
民法121条(取消しの遡及効)
契約が取り消されると、最初から無効であったものとみなされます。消費貸借契約が取り消された場合、貸主の交付行為は法律上の原因を失うため、不当利得として返還を求めることができます。第三者への直接給付がなされた場合に「誰が」利益を受けたといえるかが本件のです。
身近な例え
ざっくりまとめ
試験対策ポイント
ただし、借主と第三者の間に何の関係もなく、強迫など特段の事情がある場合は例外として借主の利得が否定される
注意:「自分が直接受け取っていない」という事実だけでは利得の否定理由にならないのが原則であることを押さえること
民法703条の不当利得の返還範囲は「現に利益を受けている限度」であり、善意の受益者は利益が消滅していれば返還義務を免れる(民法703条)点も整理しておくこと
消費貸借契約の取消し(錯誤・詐欺・強迫など)により法律上の原因が遡及的に消滅し、不当利得返還請求が発生するという流れを理解すること
関連法令
関連判例
錯誤による和解契約
合意解除と転得者の関係は対抗関係として処理され、転得者が保護されるには登記が必要(善意であっても不可) 債権者代位による登記請求も、代位する丙自身が登記を備えていなければ認められない 注意:合意解除前の第三者保護は民法545条1項ただし書が根拠だが、保護のためには対抗要件(登記)の具備が必要 信義則に反する特段の事情がある場合は例外的に登記なしでも保護される余地がある(最判昭45.3.26と対比して押さえること) 解除前の第三者は登記が必要、解除後の第三者も登記で対抗関係を処理する点をセットで整理すること
有責配偶者からの離婚請求
有責配偶者からの離婚請求が例外的に認められる3要件:①相当長期間の別居、②未成熟の子がいない、③著しく社会正義に反する特段の事情がない 注意:3要件はすべて満たす必要があり、一つでも欠けると原則に戻り認められない 未成熟の子とは経済的に独立していない子であり、成人した子は含まれない 相手方の経済的不利益は財産分与・慰謝料で解決すべきものとされ、離婚否定の根拠にならない 本判決は従来の判例を変更した大法廷判決であり、判例変更として位置づけられている
共同抵当建物の再築
土地のみに抵当権が設定された場合→建物が再築されても法定地上権が成立する可能性あり(大判昭10.8.10)。共同抵当の場合→原則として法定地上権は成立しない、という対比を押さえること 例外として法定地上権が成立する**「特段の事情」は「①新建物の所有者と土地所有者が同一、かつ②再築時点の土地抵当権者が新建物に同順位の共同抵当権の設定を受けた」場合であり、この2要件の同時充足**が必要 判断の核心は**「抵当権設定当事者の合理的意思」**の保護であり、「建物を守る(法定地上権)」より「抵当権者を守る(担保価値の保全)」が優先される 注意:新建物に抵当権が設定されていても、土地の抵当権と同順位でなければ特段の事情にあたらず、法定地上権は成立しない 出題実績:平成23年度問題30選択肢4で「特段の事由のない限り再築建物に法定地上権は成立しない」として正答となっている頻出論点
転用物訴権
転用物訴権(不当利得返還請求)が認められるには、建物所有者が対価関係なしに(無償で)利益を受けた場合に限定される 賃貸借契約において賃貸人が権利金免除・家賃減額など何らかの対価を負担していれば、利益に「法律上の原因あり」として請求は認められない 注意:従来の「ブルドーザー事件」(最判昭45.7.16)で広く認められていた転用物訴権を、本判例が実質的に制限・変更した 請求が認められる要件:①賃借人への請負代金請求権が無資力により事実上無価値、②所有者が対価関係なしに利益を受けていること 本判例は小法廷判決であるが、大法廷判決の変更に相当する重要判例
離婚に伴う財産分与の詐害行為該当性
債務超過という一事だけでは詐害行為にならない。特段の事情(不相当に過大 かつ 財産分与に仮託した財産処分)が必要 詐害行為として取り消せるのは不相当に過大な部分に限られ、財産分与全体が取り消されるわけではない 注意:相続放棄は身分行為として詐害行為の対象にならないが、遺産分割協議は財産権を目的とする行為として対象となる(最判平11.6.11)との対比を押さえること 離婚慰謝料の合意については別途基準があり、負担すべき損害賠償額を超えた部分が詐害行為の対象となる(最判平12.3.9) 民法424条2項「財産権を目的としない行為には適用しない」との関係で、財産分与の身分行為的性質と財産的性質の両面を理解しておくこと
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