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A行政法行政事件訴訟

運転免許停止処分取消請求事件

最高裁判所1980-11-25
訴えの利益運転免許停止処分停止期間の満了1年間無違反・無処分事実上の効果行政事件訴訟法9条法律上の利益取消訴訟

免許停止の期間が終わり、1年間無違反なら訴えの利益は消える!

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なる子ちゃん

事案の概要

自動車運転免許保持者X(原告)は、Y県警本部長から自動車運転免許の効力を30日間停止する処分を受けました。Xは講習を受けることで停止期間が1日に短縮されました。その後、処分の日から1年間無違反・無処分で経過しました。XはY県公安委員会に対して審査請求をしましたが棄却されたため、審査手続きの瑕疵を理由に本件処分及び裁決の取消訴訟を提起しました。しかし、訴訟の時点では停止期間はすでに満了し、処分から1年も経過していました。
争点

争点

自動車運転免許の効力停止処分を受けた者が、停止期間を経過し、かつ処分の日から1年間無違反・無処分で経過した後も、当該処分の取消訴訟における訴えの利益(取消しによって回復すべき法律上の利益)を有するか、というのがこの事件の争点です。
判旨

判旨

免許の効力停止期間が経過すれば、当該処分の効果はなくなります。また、処分の日から1年間無違反・無処分で経過した場合、その後Xが本件処分を理由に道路交通法上の不利益を受けるおそれがなくなります。他に本件処分を理由としてXを不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定もありません。警察が保持する違反記録は名誉感情等に関わる事実上の効果にとどまり、取消しによって回復すべき法律上の利益にはあたりません。したがって、Xは本件処分及び裁決の取消しによって回復すべき法律上の利益を有しません。
【原文】

 自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、免許の効力停止期間を経過し、かつ、右処分の日から無違反・無処分で1年を経過したときは、右処分の取消によつて回復すべき法律上の利益を有しない。
判決

判決

破棄自判。停止期間満了後1年が経過した以上、訴えの利益が消滅したと判断され、訴えは不適法として却下されました。
関連法令の解説

関連法令の解説

行政事件訴訟法9条
「処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができる」と定めています(原告適格・訴えの利益の規定)。本判例ではこの「法律上の利益」の有無が問題となり、停止期間満了後1年経過した時点では法律上の利益が消滅すると判断されました。

道路交通法(違反点数制度)

道路交通法は、免許停止処分の基礎となった交通違反の点数について、処分の日から起算して1年間無違反・無処分で経過した場合は、その点数が累積から切り離される仕組みを定めています。本判例はこの1年経過をもって法律上の不利益が消滅すると判断しました。
身近な例え

身近な例え

学校で停学処分を受けたけど、停学期間が終わって卒業もした後に「記録が残ってるから処分を取り消せ」と言っても、もう実際の不利益がないので認められないようなもの。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

取消訴訟を起こすには「訴えの利益」(裁判で取り消してもらうことで得られる法律上の利益)が必要なんだよね。免許停止期間が終われば運転できるようになるから、実際の不利益はなくなる。では「違反記録が警察に残る」という問題はどう?という点がこの判例のポイント。最高裁は「違反記録が残ることは名誉感情や自己評価に関わる事実上の効果にすぎず、法律上回復すべき利益にはあたらない」と判断したんだよ。道路交通法上、処分から1年経つと違反点数がリセットされて不利益がなくなるから、この時点で訴えの利益が消滅するんだね。

試験対策ポイント

運転免許停止処分は、停止期間の満了と処分日から1年間の無違反・無処分の両方が経過すると、訴えの利益が消滅する
「違反記録が警察に残る」「名誉・感情への影響」は事実上の効果にすぎず、法律上の利益ではない

注意:停止期間が満了しただけでは足りず、1年間無違反・無処分という要件も必要な点がひっかけになりやすい

行政事件訴訟法9条の「法律上の利益」は、法令上根拠のある具体的な不利益の回復を意味し、感情的・事実的な不利益は含まれない

本判例は訴えの利益の消滅の典型例として、取消訴訟の原告適格・訴えの利益の問題とセットで整理しておく
関連判例

関連判例

行政法最高裁判所

建築確認取消請求事件

建築確認の法的効果は「確認なしでは工事できない」という一点のみ 工事が完了すると建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われる 注意:保安林指定解除処分の取消訴訟(最判昭57.9.9)は代替施設設置後に訴えの利益が消滅した判例であり、本件と対比して押さえること 開発許可の取消訴訟は工事完了・検査済証交付後も訴えの利益が失われない(最判平27.12.14)との対比も重要 訴えの利益(狭義の訴えの利益)は口頭弁論終結時まで存続している必要がある

行政法最高裁判所

先行処分の加重事由がある場合の訴えの利益(平成27年)

処分期間の終了=訴えの利益の消滅ではない。処分基準に加重規定がある場合は、加重される期間中は訴えの利益が存続する。 訴えの利益が残る要件は2つ:①公にされた処分基準に加重規定があること、②将来後行処分の対象となり得る状況にあること。この2要件をセットで押さえる。 処分基準は行政庁の裁量を拘束する。公にされた処分基準と異なる取扱いをすることは、特段の事情がない限り裁量権の逸脱・濫用にあたる。 注意:訴えの利益が存続するのは「処分基準による加重を受けるべき期間内」に限られる。その期間を過ぎれば訴えの利益は消滅する点を混同しないこと。 行政手続法12条1項の「公にされた処分基準」であることが要件。内部的な基準にとどまる場合とは区別して理解すること。

行政法最高裁判所

場外車券発売施設設置許可と原告適格

原告適格が認められるのは**「法律上の利益を有する者」**(行訴法9条1項)であり、事実上の不利益を受けるだけでは足りない 「法律上の利益」の有無は、根拠法令および関連法令の趣旨・目的を総合して解釈する(行訴法9条2項) 周辺住民・一般事業者・施設利用者は、位置基準が保護する利益がいずれも一般的公益にとどまるとして原告適格なし 医療施設の開設者は、静穏な環境で医療業務を営む利益が個別的利益として保護されているとして原告適格あり 注意:文教施設(学校等)の開設者も医療施設と同様に原告適格が認められる可能性がある点も押さえること 注意:「施設から1000m以内」は申請書添付書類の基準であり、原告適格の距離基準ではない。位置的に著しい業務支障のおそれがあるか否かが判断基準

行政法最高裁判所

東京12チャンネル事件

競願関係では、拒否された者には2つの訴訟手段がある:①ライバルへの免許付与処分の取消訴訟、②自分への拒否処分の取消訴訟 キーワードは「表裏の関係」:一方への許可と他方への拒否は切り離せない関係にある 原告適格の根拠:処分が取り消されれば審査がやり直されて自分が免許を得られる可能性=法律上の利益がある 注意:単なる「商売上のライバルがいなくなってほしい」という事実上の利益だけでは原告適格は認められない。競願関係という法的構造があって初めて認められる 本件と同日(昭43.12.24)に「墓地埋葬通達事件」(通達に処分性なし)も言い渡されており、混同注意

行政法最高裁判所

選挙の立候補と免職処分の取消訴訟

訴えの利益(狭義)は、処分の取消しによって「回復すべき法律上の利益」が現時点でも存在するか否かで判断される(行訴法9条1項) 立候補・当選によって公務員への復職が不可能となっても、給与請求権などの経済的利益が残る限り訴えの利益は消滅しない 注意:「訴えの利益」と「原告適格」はいずれも行訴法9条1項の問題だが、原告適格は「最初から提起できる資格があるか」、訴えの利益(狭義)は「訴訟係属中にその利益が失われていないか」という別の問いであることを区別すること 建築確認の取消訴訟では、工事完了後は訴えの利益が失われる(最判昭59.10.26)という対比判例とあわせて整理すること 令和6年度行政書士試験(問題17・選択肢1)で出題実績あり

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