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S行政法行政事件訴訟

もんじゅ訴訟

最高裁判所1992-09-22最判平4.9.22
原告適格無効確認訴訟行政事件訴訟法36条個別的利益法律上の利益補充性要件周辺住民民事差止め訴訟

原発周辺29〜58kmの住民も原告適格あり!民事差止めと無効確認訴訟は併用できる

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なる子ちゃん

事案の概要

動力炉・核燃料開発事業団が福井県敦賀市に高速増殖炉「もんじゅ」の建設・運転を計画し、内閣総理大臣が原子炉等規制法に基づき設置許可処分を行った。原子炉から約29kmないし約58kmの範囲内に居住する周辺住民Xらが、安全審査に重大かつ明白な瑕疵があるとして原子炉設置許可処分の無効確認訴訟を提起するとともに、設置者に対して建設・運転の差止めを求める民事訴訟も併合提起した。周辺住民に原告適格があるか、また民事差止め訴訟を提起している以上、無効確認訴訟は行政事件訴訟法36条の要件を欠くのではないかが争われた。
争点

争点

原子炉から29〜58km圏内の周辺住民に無効確認訴訟の原告適格(行訴法36条の「法律上の利益を有する者」)が認められるか、また民事差止め訴訟をすでに提起していることが無効確認訴訟の補充性要件を満たさない根拠となるかどうかが争点です。
判旨

判旨

原子炉設置許可基準の趣旨は、万が一の事故が周辺住民の生命・身体に重大な危害をもたらすことを防止する点にあり、単に一般公益を守るだけでなく、事故による災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命・身体の安全を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含みます。原子炉から29〜58km圏内の住民は右の範囲に属するとして、行訴法36条の「法律上の利益を有する者」にあたり、原告適格が認められます。また、周辺住民が提起している民事差止め訴訟は行訴法36条にいう「当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え」には該当せず、無効確認訴訟と比べてより直接的・適切な紛争解決手段ともいえないため、民事差止め訴訟を提起していることは無効確認訴訟の補充性要件を欠く根拠にはなりません。
【原文】

 被上告人らは本件原子炉施設の設置者である動力炉・核燃料開発事業団に対し、人格権等に基づき本件原子炉の建設ないし運転の差止めを求める民事訴訟を提起しているが、右民事訴訟は、行政事件訴訟法36条にいう当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えに該当するものとみることはできず、また、本件無効確認訴訟と比較して、本件設置許可処分に起因する本件紛争を解決するための争訟形態としてより直截的で適切なものであるともいえないから、被上告人らにおいて右民事訴訟の提起が可能であって現にこれを提起していることは、本件無効確認訴訟が同条所定の前記要件を欠くことの根拠とはなり得ない。
判決

判決

原告適格を認容。原子炉設置許可処分の無効確認訴訟は適法に提起できる。
関連法令の解説

関連法令の解説

行政事件訴訟法36条(無効等確認の訴えの原告適格)
この条文は、処分の無効確認訴訟を提起できる者を「法律上の利益を有する者」であって、「当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」に限定しています。本判例では、周辺住民の法律上の利益の有無と、民事差止め訴訟がこの「現在の法律関係に関する訴え」にあたるかどうかの両方が論じられました。

行政事件訴訟法9条(取消訴訟の原告適格)

この条文は取消訴訟の原告適格を定めており、本判例では無効確認訴訟における「法律上の利益を有する者」の意義も同条と同義に解すると判示されています。原告適格の判断基準として、当該行政法規が不特定多数者の利益を個々人の個別的利益としても保護しているかどうかを、法規の趣旨・目的や保護される利益の内容・性質から判断するという手法が示されました。

原子炉等規制法(核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)

原子炉の設置許可基準を定めた法律です。本判例では、同法の設置許可基準が周辺住民の生命・身体の安全という個別的利益を保護する趣旨を含むと解釈され、これが原告適格を認める根拠となりました。
身近な例え

身近な例え

危険な工場が隣に建つとき、近所の住民が「その許可はおかしい」と訴える権利があるのと同じ。命に関わるから訴える資格が認められます。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

原告適格の話でいうと、原子炉設置許可の基準は単に「社会全体の安全を守る」ためだけじゃなくて、周辺住民の生命・身体という個人的利益を個別に保護する趣旨も含むって判断されたんだ。
だから29〜58km圏内の住民も「法律上の利益を有する者」として無効確認訴訟の原告適格が認められるんだよ。

もう一方の争点、「民事差止め訴訟を起こしているなら無効確認訴訟は不要では?」という点については、民事差止め訴訟は行訴法36条の「現在の法律関係に関する訴え」に当たらないし、無効確認訴訟のほうがより直接的・適切な紛争解決手段だから、両方提起してもOKなんだよ。

試験対策ポイント

無効確認訴訟の「法律上の利益を有する者」の判断は、当該法規が不特定多数者の利益を個々人の個別的利益としても保護しているかどうかによる
本件では原子炉から29〜58km圏内の住民に原告適格が認められた

注意:原告適格の判断基準は行訴法9条(取消訴訟)と行訴法36条(無効確認訴訟)で同義に解される

民事差止め訴訟は「当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え」に該当しないため、無効確認訴訟の補充性要件(行訴法36条)を否定する根拠にならない

無効確認訴訟は、民事差止め訴訟よりより直接的・適切な紛争解決手段として位置づけられる点も重要
法令

関連法令

試験

出題年度

201020132016
関連判例

関連判例

行政法最高裁判所

小田急高架化訴訟

原告適格の判断基準:当該行政法規が「個々人の個別的利益としても保護する趣旨」を含むかどうか 都市計画事業の認可に対して、「騒音・振動等による健康または生活環境に係る著しい被害を直接受けるおそれのある者」には原告適格が認められる 原告適格の判断には関係法令(環境影響評価条例等)の趣旨・目的も参酌される(行訴法9条2項) 注意:原告適格が認められても、本案審理では違法と認められなかった(裁量権の逸脱・濫用なし)という結論に至っている 本判例は2004年の行訴法改正後に大法廷で原告適格を拡大した画期的判例として位置づけられる

行政法最高裁判所

場外車券発売施設設置許可と原告適格

原告適格が認められるのは**「法律上の利益を有する者」**(行訴法9条1項)であり、事実上の不利益を受けるだけでは足りない 「法律上の利益」の有無は、根拠法令および関連法令の趣旨・目的を総合して解釈する(行訴法9条2項) 周辺住民・一般事業者・施設利用者は、位置基準が保護する利益がいずれも一般的公益にとどまるとして原告適格なし 医療施設の開設者は、静穏な環境で医療業務を営む利益が個別的利益として保護されているとして原告適格あり 注意:文教施設(学校等)の開設者も医療施設と同様に原告適格が認められる可能性がある点も押さえること 注意:「施設から1000m以内」は申請書添付書類の基準であり、原告適格の距離基準ではない。位置的に著しい業務支障のおそれがあるか否かが判断基準

行政法最高裁判所

東京12チャンネル事件

競願関係では、拒否された者には2つの訴訟手段がある:①ライバルへの免許付与処分の取消訴訟、②自分への拒否処分の取消訴訟 キーワードは「表裏の関係」:一方への許可と他方への拒否は切り離せない関係にある 原告適格の根拠:処分が取り消されれば審査がやり直されて自分が免許を得られる可能性=法律上の利益がある 注意:単なる「商売上のライバルがいなくなってほしい」という事実上の利益だけでは原告適格は認められない。競願関係という法的構造があって初めて認められる 本件と同日(昭43.12.24)に「墓地埋葬通達事件」(通達に処分性なし)も言い渡されており、混同注意

行政法最高裁判所

新潟空港訴訟

社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民には定期航空運送事業免許の取消訴訟における原告適格がある 原告適格の根拠:航空法の免許基準が周辺住民の個別的利益も保護する趣旨を含むから 行訴法10条1項:取消訴訟では自己の法律上の利益に関係のない違法を取消理由とすることはできない 注意:原告適格が認められても、主張できる違法事由は自己の利益と関連するものに限られる 小田急高架訴訟(最大判平17.12.7)や場外車券発売施設訴訟(最判平21.10.15)と並んで第三者の原告適格に関する重要判例として整理すること

行政法最高裁判所

公衆浴場業距離制限規定事件

本判例の結論は**「原告適格あり(訴えの利益を有する)」**であり、「反射的利益にすぎず原告適格なし」という引っかけ選択肢に注意 原告適格が認められるのは、**「法律上保護された利益」**を有する者に限られる(行政事件訴訟法9条1項) 公衆浴場法の距離制限の趣旨は①国民保健・環境衛生という公益と、②既存業者を濫立競争から守る目的の両方を含むと解釈された点が判断の核心 反射的利益とは、法律が公益保護を目的として定めた結果、間接的・事実上もたらされる利益のことで、原告適格の根拠にはならない。本判例ではこの反射的利益にとどまらないと判断されたことが重要 注意:本判例は昭和37年当時の「行政事件訴訟特例法」下の判決。現行の**行政事件訴訟法9条2項(平成16年改正)**では原告適格の判断基準がさらに明文化・拡大されており、本判例はその出発点として位置づけられる

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