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A民法債権総論

債権者の弁済を受領しない意思が明確に認められる場合

最高裁判所1957-06-05最判昭32.6.5
口頭の提供債務不履行弁済受領拒絶受領拒否の明確な意思民法493条

受け取る気がゼロなのが明らかなら、口頭の提供すら不要!形式的に無意義なことは法も要求しない

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なる子ちゃん

事案の概要

債務者が債権者に対して弁済しようとしたところ、債権者は「そもそも契約なんて存在しない」と主張して受領を拒絶しました。このような状況で、債務者が「いつでも払えます」という口頭の提供をしないまま時間が経過した場合に、債務不履行責任を負うかどうかが争われた事件です。受領拒否の意思が明確な相手に対してまで形式的な提供行為が必要かどうかが問われました。
争点

争点

債権者が契約の存在自体を否定するなど弁済を受領しない意思が明確に認められる場合、債務者が口頭の提供(言語上の提供)をしなくても債務不履行責任を免れることができるか、というのがこの事件の争点です。
判旨

判旨

債務者が口頭の提供をしたとしても、債権者が契約そのものの存在を否定するなど弁済を受領しない意思が明確と認められる場合には、債務者が形式的に弁済の準備をしてその旨を通知することを要求することは全く無意義です。法はこのような無意義なことを要求しているものとは解することができません。したがって、このような場合には、債務者は口頭の提供をしないからといって債務不履行の責任を負うものとはいえません。
【原文】

債務者が言語上の提供をしても、債権者が契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められる場合においては、債務者が形式的に弁済の準備をし且つその旨を通知することを必要とするがごときは全く無意義であつて、法はかかる無意義を要求しているものと解することはできない。それ故、かかる場合には、債務者は言語上の提供をしないからといつて、債務不履行の責に任ずるものということはできない。
判決

判決

債務不履行責任なし。受領拒否の意思が明確な場合は口頭の提供なしでも債務不履行責任を免れることができると確定しました。
関連法令の解説

関連法令の解説

民法493条(弁済の提供の方法):弁済の提供は原則として現実にしなければならないが、債権者があらかじめ受領を拒絶した場合や債務の履行に債権者の行為が必要な場合は、弁済の準備をして通知すること(口頭の提供)で足りると定めています。本判例はこの口頭の提供すら不要となる例外的場面を示しました。民法492条(弁済の提供の効果):弁済の提供があった時から、債務者は債務不履行の責任を免れると定めています。本件では提供がない場合でも例外的に責任が免除される場面が問われました。
身近な例え

身近な例え

友人に借りた本を返そうとしたら「そんな本貸してない!」と頑なに拒否。そんな相手に「返すよ」と何度も言う必要はないですよね。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

本来は「払いますよ」って口頭でも申し出ないと債務不履行になっちゃうんだけど、相手が「契約なんてない」って言い張ってどう見ても受け取る気がゼロな場合、形式的に「払いますよ」って言っても意味がないよね。法律って意味のない形式を強要するものじゃないから、そういう場合は口頭の提供なしでも債務不履行責任は問われない、というのが裁判所の判断。「全く無意義であって法はかかる無意義を要求しているものと解することはできない」という言い回しは試験にそのまま出ることもあるから要チェックだよ!

試験対策ポイント

弁済の提供には3段階の構造がある。原則=現実の提供、例外①=口頭の提供(受領拒絶があらかじめ明らかな場合)、例外②=提供不要(受領拒否の意思が明確な場合)。この3段階をセットで整理すること。
「受領しない意思が明確」の典型例は「契約の存在自体の否定」。単なる受領拒絶とは異なり、そもそも債権債務関係を認めない態度が必要とされる点を押さえる。

「全く無意義であって法はかかる無意義を要求しない」という論理構造を理解する。形式的な行為に意味がない場合はその行為を省略できるという考え方は他の論点にも応用できる。

注意:受領拒絶があれば常に提供不要というわけではない。単に受領を拒絶した場合は口頭の提供が必要であり、提供不要となるのは受領拒否の意思が「明確」な場合に限られる。

債権者遅滞(受領遅滞)との関係も整理しておく。弁済の提供があると債権者が受領遅滞に陥り、以後の履行不能等のリスクが債権者に転嫁されるという効果とあわせて理解すること。
法令

関連法令

関連判例

関連判例

民法最高裁判所

賃貸借契約の解除と転借人

賃借人の債務不履行を理由とする解除の場合、転貸借は「賃貸人が転借人に返還請求した時」に履行不能により終了する(自動的・即時終了ではない) 注意:賃貸借が合意解除された場合は、賃貸人は原則として転借人に終了を対抗できない(民法613条3項) 賃貸人は、債務不履行を理由に解除する際、転借人に催告する必要はなく、賃借人への催告だけで足りる 借地借家法34条(建物転貸借の終了の通知)は期間満了・解約申入れの場合に適用され、債務不履行解除には適用されない 転貸借終了の時期のポイント:返還請求時=転貸借終了時という構造を押さえる

民法最高裁判所

保証人の原状回復義務

特定物売買の売主保証人は、特に反対の意思表示がない限り、解除後の**原状回復義務(代金返還義務)**についても保証責任を負う 保証の趣旨は「引渡債務そのものの履行」ではなく、「債務不履行から生じる売主の債務」への保証と解釈される 注意:「反対の意思表示」がある場合は原状回復義務を保証の範囲から除外できるため、保証契約の文言・趣旨が重要になる 民法545条1項の原状回復義務は、解除によって新たに発生する独立した義務だが、保証の趣旨解釈によってその範囲に取り込まれる 本判決は大法廷判決であり、保証の範囲の解釈に関するリーディングケースとして位置づけられる

民法最高裁判所

自衛隊内での事故と安全配慮義務

安全配慮義務は、特別な社会的接触関係にある当事者間で信義則上当然に発生する付随義務である 国と公務員の間でも安全配慮義務が認められ、その違反は債務不履行として扱われる 消滅時効は会計法30条の5年ではなく、民法167条の10年が適用される 注意:2020年の民法改正後は「知った時から5年・権利行使できる時から10年」に変更されているため、改正前後を区別して整理すること 安全配慮義務はその後の判例・労働契約法5条にも引き継がれ、民間企業と労働者の間でも認められている(川義事件 最判昭59.4.10 参照)

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