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A民法総則(意思表示・代理・時効等)

故意の条件成就

最高裁判所1994-05-31最判平6.5.31
条件故意の条件成就民法130条類推適用みなし規定

故意に条件を成就させた者はその利益を主張できない!民法130条(旧1項)の類推適用で「成就していないとみなせる」

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判例図解

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なる子ちゃん

事案の概要

特許をめぐる紛争で、かつらメーカーX(アデランス)とY(アートネイチャー)は「Yは仕様α(櫛歯ピン付)のかつらを製造しない、違反した場合Xに違約金1,000万円を支払う」との和解契約を締結しました。ところがXは取引関係者Wを顧客に扮させてYの店舗に送り込み、Wは製造が進んだ段階で「仕様αにしないと解約する」と強要し、Yの従業員が断り切れずに仕様αのかつらを渡しました。XはこれをもってYが和解条項に違反したとして違約金1,000万円の支払いを求める執行文付与を受けたのに対し、Yが異議を申し立てたのがこの事件です。
争点

争点

条件の成就によって利益を受ける当事者が、相手方を積極的に誘引して故意に条件を成就させた場合、民法130条(旧1項)の類推適用により、不利益を受ける相手方はその条件が成就していないとみなすことができるかどうかが争点です。
判旨

判旨

Xは単に和解条項違反行為の有無を調査・確認する範囲を超え、Wを介して積極的にYを和解条項に違反する行為をするよう誘引しており、これは条件の成就によって利益を受ける当事者であるXが故意に条件を成就させたものというべきです。そのため、民法130条の類推適用により、Yらは本件和解条項の条件が成就していないものとみなすことができると解するのが相当です。
【原文】

 条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときは、民法130条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる。
判決

判決

条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させた場合、相手方はその条件が成就していないとみなすことができると判断された。
関連法令の解説

関連法令の解説

民法130条1項(条件の成就の妨害)
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は条件が成就したものとみなすことができると定めています。本判決は当時この1項のみが存在したため、その趣旨・目的の類似性に着目して逆の場面に類推適用するという論理構成をとりました。民法130条2項(条件の不正な成就 ※平成29年改正で新設)

条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は条件が成就しなかったものとみなすことができると定めています。本判決の類推適用による判例法理を明文化した規定ですが、判決時の「故意に」という文言を「不正に」と修正した点に注意が必要です。民法1条2項(信義誠実の原則)

権利の行使および義務の履行は信義に従い誠実に行わなければならないと定めています。本判決の根底にある思想であり、故意に条件を成就させた者がそのまま利益を受けることは信義則に反するという判断の基礎となります。
身近な例え

身近な例え

「宿題を終えたらお小遣いをあげる」という約束で、子供が親の答えを盗み見て宿題を終わらせた場合、親は「約束は達成されていない」と言えるようなものです。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

「和解条約に違反したらXが違約金1,000万円をもらえる」という条件。Xはその条件を自分で仕組んで成就させた(Yに違反行為をさせた)にもかかわらず、1,000万円を請求するのはずうずうしすぎる!という話。当時の民法130条(旧1項)は「故意の妨害→成就したとみなす」という場面の規定しかなかったけど、最高裁はその趣旨を「逆の場面」にも類推適用して「故意の成就→成就していないとみなせる」という結論を出した。この判例が平成29年改正で民法130条2項として明文化されたというストーリーが試験のキモ!

試験対策ポイント

民法130条1項「故意の妨害→成就したとみなす」と、2項「不正な成就→成就しなかったとみなす」は対になる規定
本判例は改正前に「類推適用」で結論を出した判例であり、平成29年改正で民法130条2項として明文化された

改正後の2項では判決時の「故意に」が「不正に」と変更されている点に注意(試験でのひっかけポイント)

条件成就を「妨害」した場合も「故意に成就」させた場合も、どちらも信義則違反として相手方を保護する効果がある

「みなす」は反証を許さない強い効果(「推定する」とは区別すること)

本件の事案:アデランス(X)がアートネイチャー(Y)を罠にはめた「かつら事件」として覚えるとよい
法令

関連法令

関連判例

関連判例

民法最高裁判所

同時履行の抗弁権が認められる場合(詐欺取消後の返還義務)

詐欺取消し後の原状回復義務には、民法533条が類推適用される(直接適用ではない) 売主の仮登記抹消義務と買主の売買代金返還義務は同時履行の関係にある 民法533条は有効な双務契約だけでなく、取消し後の返還義務にも類推適用できるという点が重要 類推適用の根拠は公平の原則であり、一方だけに先履行を強いることの不公平を是正する趣旨である 注意:関連法令として提示される「民法121条の2」は2020年改正で新設された条文であり、本判決(昭和47年)当時は存在しなかった。現行法では121条の2第1項が原状回復義務の根拠条文となる(第2項は無償行為の特則なので本件とは直接関係しない)

民法最高裁判所

民法711条の固有の慰謝料請求

民法711条の固有慰謝料請求権者は原則「父母・配偶者・子」の3種類 列挙外の者でも①実質的に同視しうべき身分関係+②甚大な精神的苦痛の2要件を満たせば類推適用により請求可能(本判決) 類推適用の決め手は血縁・親族の近さではなく、長年の同居・庇護・依存という生活実態 注意:類推適用の主張・立証責任は請求者側が負う。関係があれば自動的に認められるわけではない 対比:711条の固有慰謝料と、被害者本人の慰謝料請求権(相続によるもの)は別個の権利として併存する(最大判昭42.11.1) 類推適用が認められうる者の例:内縁の配偶者・祖父母・孫・兄弟姉妹・事実上の養子など(ただし実態による個別判断が必要)

行政法最高裁判所

地方公共団体の長の代表行為と双方代理

地方公共団体の長による双方代理行為には、民法108条が直接適用ではなく類推適用される 類推適用の理由は「私人間の双方代理と同様に地方公共団体の利益が害されるおそれがある」点にある 類推適用の結果、当該行為は無権代理となり、原則として契約効果は地方公共団体に帰属しない 議会が追認した場合は民法116条の類推適用により、契約の効果が地方公共団体に帰属し有効となる 住民はこのような違法行為に対して地方自治法242条の2に基づく住民訴訟で争うことができる 注意:民法108条は「適用」ではなく「類推適用」である点と、追認の根拠が民法116条である点がひっかけになりやすい

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