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A民法債権総論

同時履行の抗弁権が認められる場合(詐欺取消後の返還義務)

最高裁判所1972-09-07最判昭47.9.7
同時履行の抗弁権詐欺による取消し類推適用原状回復返還義務

「取消し後の返還も同時履行!一方だけ先に返せとは言えない」

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なる子ちゃん

事案の概要

売主が買主に土地を売却し、買主は売買代金を支払い、売主は土地の仮登記(本登記の前段階として権利を仮に確保する登記)を行いました。ところが、この売買契約は詐欺によるものだったため、取り消されることになりました。取消しの結果、売主には仮登記を抹消する義務が、買主には受け取った売買代金を返還する義務がそれぞれ発生しました。そこで、これらの返還義務を同時に履行すべきか(一方だけが先に履行しなければならないのか)が争われました。
争点

争点

詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、売主の負う土地の仮登記抹消義務と買主の負う売買代金返還義務は、民法533条を類推適用することにより同時履行の関係にあると認められるか、というのがこの事件の争点です。
判旨

判旨

詐欺によって締結された売買契約が取り消された結果、売主には土地の仮登記を抹消する義務が、買主には受領した売買代金を返還する義務がそれぞれ生じました。民法533条は本来、有効な双務契約上の対立する債務について同時履行の抗弁権を認めた規定です。しかし、取消し後の原状回復義務も、双方がそれぞれ相手方から受けた給付を返還するという点で互いに密接に関連しており、一方だけに先履行を強いるのは公平の原則に反します。裁判所は、このような場合にも民法533条を類推適用し、双方の返還義務は同時履行の関係にあると判断しました。つまり、契約が取り消された後であっても、「相手が返すまで自分も返さなくてよい」という関係が成り立つということです。
判決

判決

詐欺による取消し後の売主の仮登記抹消義務と買主の売買代金返還義務は、民法533条の類推適用により同時履行の関係にあると認められる。
関連法令の解説

関連法令の解説

民法121条の2第1項(原状回復の義務)は、無効な行為(取消しにより遡及的に無効となった行為を含む)に基づく債務の履行として給付を受けた者が、相手方を原状に復させる義務を負うことを定めています。2020年の民法改正で新設された規定で、本判決当時は明文がありませんでしたが、現行法ではこの条文が取消し後の原状回復義務の根拠となります。
民法533条(同時履行の抗弁権)は、双務契約の当事者の一方が、相手方がその債務の履行を提供するまでは自己の債務の履行を拒むことができるという規定です。本来は有効な契約上の対立する債務に適用されますが、本判決では取消し後の原状回復義務にも公平の観点から類推適用が認められました。
身近な例え

身近な例え

友達と交換したゲームソフトが、騙されて交換したと分かったとき。「お互い同時に返そうよ」と言えるのと同じです。先に返すと持ち逃げされるリスクがありますからね。
なる子ちゃん

ざっくりまとめ

詐欺で契約が取り消された後、お互いに「もらったもの返してね」っていう義務が残るわけだけど、片方だけ先に返せって言われたら不公平だよね。だから裁判所は、本来は有効な双務契約に適用される同時履行の抗弁権(民法533条)を「類推適用」して、お互いの返還義務は同時履行の関係にあるって認めたんだよね。「類推適用」ってワードが試験でめちゃくちゃ聞かれるから要チェック!

試験対策ポイント

詐欺取消し後の原状回復義務には、民法533条が類推適用される(直接適用ではない)
売主の仮登記抹消義務と買主の売買代金返還義務は同時履行の関係にある

民法533条は有効な双務契約だけでなく、取消し後の返還義務にも類推適用できるという点が重要

類推適用の根拠は公平の原則であり、一方だけに先履行を強いることの不公平を是正する趣旨である

注意:関連法令として提示される「民法121条の2」は2020年改正で新設された条文であり、本判決(昭和47年)当時は存在しなかった。現行法では121条の2第1項が原状回復義務の根拠条文となる(第2項は無償行為の特則なので本件とは直接関係しない)
法令

関連法令

関連判例

関連判例

民法最高裁判所

故意の条件成就

民法130条1項「故意の妨害→成就したとみなす」と、2項「不正な成就→成就しなかったとみなす」は対になる規定 本判例は改正前に「類推適用」で結論を出した判例であり、平成29年改正で民法130条2項として明文化された 改正後の2項では判決時の「故意に」が「不正に」と変更されている点に注意(試験でのひっかけポイント) 条件成就を「妨害」した場合も「故意に成就」させた場合も、どちらも信義則違反として相手方を保護する効果がある 「みなす」は反証を許さない強い効果(「推定する」とは区別すること) 本件の事案:アデランス(X)がアートネイチャー(Y)を罠にはめた「かつら事件」として覚えるとよい

民法最高裁判所

民法711条の固有の慰謝料請求

民法711条の固有慰謝料請求権者は原則「父母・配偶者・子」の3種類 列挙外の者でも①実質的に同視しうべき身分関係+②甚大な精神的苦痛の2要件を満たせば類推適用により請求可能(本判決) 類推適用の決め手は血縁・親族の近さではなく、長年の同居・庇護・依存という生活実態 注意:類推適用の主張・立証責任は請求者側が負う。関係があれば自動的に認められるわけではない 対比:711条の固有慰謝料と、被害者本人の慰謝料請求権(相続によるもの)は別個の権利として併存する(最大判昭42.11.1) 類推適用が認められうる者の例:内縁の配偶者・祖父母・孫・兄弟姉妹・事実上の養子など(ただし実態による個別判断が必要)

行政法最高裁判所

地方公共団体の長の代表行為と双方代理

地方公共団体の長による双方代理行為には、民法108条が直接適用ではなく類推適用される 類推適用の理由は「私人間の双方代理と同様に地方公共団体の利益が害されるおそれがある」点にある 類推適用の結果、当該行為は無権代理となり、原則として契約効果は地方公共団体に帰属しない 議会が追認した場合は民法116条の類推適用により、契約の効果が地方公共団体に帰属し有効となる 住民はこのような違法行為に対して地方自治法242条の2に基づく住民訴訟で争うことができる 注意:民法108条は「適用」ではなく「類推適用」である点と、追認の根拠が民法116条である点がひっかけになりやすい

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