通行地役権の対抗要件
見える通路、登記なしでも対抗可能
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事案の概要
争点
判旨
【原文】
通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。
判決
関連法令の解説
「不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定めています。ただしここでいう「第三者」は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する者に限定されます。本判例は、通行地役権の文脈でこの「第三者」の範囲を制限しました。
民法280条
「地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と定める地役権の基本条文です。通行地役権は要役地の便益のために承役地を通行する権利であり、物権として登記が原則必要ですが、本判例の要件を満たす場合は未登記でも対抗できます。
身近な例え
ざっくりまとめ
■ 事件番号
最判平10.02.13(事件番号:平成9(オ)966、民集52巻1号65頁)
■ キャッチコピー
通行地役権の登記がなくても、通路の状況が客観的に明らかで譲受人が認識できたなら対抗できる!
■ 事案の概要
要役地(通行する側の土地)の所有者X(原告)は、承役地(通行される側の土地)にアスファルト舗装・排水溝設置などの工事を施して通路を開設し、通行地役権の設定契約を結んでいましたが、登記はしていませんでした。その後、承役地がY(被告)に譲渡されました。Yは通行地役権の存在は確認していませんでしたが、Xが土地を通路として継続的に使用していることは認識していました。YがXの通行を妨害したため、Xが通行地役権の確認と妨害排除を求めました。
■ ざっくりまとめ
原則として地役権も登記がなければ第三者に対抗できないんだよね(民法177条)。でも「登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者」でなければ、登記なしでも対抗できる。じゃあどんな場合に「正当な利益なし」になるの?というのがこの判例で示されたんだよ。承役地の譲渡時に、①通路として継続的に使用されていることが位置・形状・構造などの物理的状況から客観的に明らかで、②譲受人がそれを認識していたか認識できた場合、その譲受人は「正当な利益を有する第三者」にはあたらない。つまり登記なしで地役権を主張できるってこと。通路の状況を見ればわかったはずなのに、それを無視して「知らなかった」とは言えないってことだよ。
試験対策ポイント
ただし、次の両要件を満たす場合、譲受人は「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者」にあたらず、登記なしで対抗可能
①譲渡時に承役地が継続的に通路として使用されていることが物理的状況から客観的に明らか
②譲受人が認識していたか又は認識可能であった
注意:譲受人が通行地役権の存在を知らなかったことは関係なく、通路の物理的な存在を認識できたか否かが判断基準
この判例は背信的悪意者排除論とは異なる論理(「正当な利益を有する第三者ではない」)による対抗力の認定
関連法令
出題年度
関連判例
錯誤による和解契約
合意解除と転得者の関係は対抗関係として処理され、転得者が保護されるには登記が必要(善意であっても不可) 債権者代位による登記請求も、代位する丙自身が登記を備えていなければ認められない 注意:合意解除前の第三者保護は民法545条1項ただし書が根拠だが、保護のためには対抗要件(登記)の具備が必要 信義則に反する特段の事情がある場合は例外的に登記なしでも保護される余地がある(最判昭45.3.26と対比して押さえること) 解除前の第三者は登記が必要、解除後の第三者も登記で対抗関係を処理する点をセットで整理すること
被相続人からの譲受人と相続人からの譲受人
相続人自身は被相続人の包括承継人であり民法177条の「第三者」にはあたらない しかし、相続人からの譲受人(第三者)は民法177条の「第三者」にあたる 被相続人からの譲受人と相続人からの譲受人は対抗関係に立ち、先に登記を備えた方が勝つ この結論は被相続人と相続人の間が贈与・売買・遺贈・死因贈与のいずれの場合にも同様に妥当する 注意:「相続人は第三者にならない=登記不要」という誤解が典型的なひっかけ問題になりやすい
詐術の場合の取消権の否定
相続人自身は被相続人の包括承継人であり民法177条の「第三者」にはあたらない しかし、相続人からの譲受人(第三者)は民法177条の「第三者」にあたる 被相続人からの譲受人と相続人からの譲受人は対抗関係に立ち、先に登記を備えた方が勝つ この結論は被相続人と相続人の間が贈与・売買・遺贈・死因贈与のいずれの場合にも同様に妥当する 注意:「相続人は第三者にならない=登記不要」という誤解が典型的なひっかけ問題になりやすい
背信的悪意者
背信的悪意者は民法177条の「第三者」に該当しないため、登記がなくても対抗できる 注意:単なる悪意(事実を知っていること)だけでは背信的悪意者にならない。信義則に反する特別な事情が必要 背信的悪意者の典型例は「登記がないことに乗じて不当な利益を得る目的」で取引した者 背信的悪意者から譲り受けた転得者については、転得者自身が背信的悪意者でなければ177条の第三者として保護される(転得者は独立して判断する) 民法177条の「第三者」から除外されるのは、背信的悪意者のほか不法占拠者・不法行為者なども同様
代物弁済の効果発生
代物弁済の契約成立と債務消滅の効力発生は別のタイミング。合意した瞬間に成立するが、不動産の場合は登記完了まで債務は消滅しない。 不動産の代物弁済では登記完了が債務消滅の要件。動産の場合は引渡し完了がそのタイミングとなる点とあわせて整理すること。 「諾成契約だが要物的効力」という構造を理解する。代物弁済契約は合意だけで成立するが(諾成)、効力発生には実際の給付完了が必要(要物的)という二段階の構造がポイント。 注意:意思表示=即債務消滅という理解は誤り。口約束や書面による合意だけでは足りず、現実の給付完了が必要という点はひっかけとして頻出。 民法177条の対抗要件(登記)との関係にも注意。本件の登記完了は対抗要件としての意味を超えて、債務消滅という効力発生要件として機能している点が通常の物権変動の場面と異なる。
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