占有権原を有する者による抵当権侵害
形式的な権原があっても競売妨害目的の占有は抵当権侵害!明渡しは認めるが賃料請求はNG
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事案の概要
争点
判旨
【原文】
抵当不動産の占有者に対する抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,当該占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる。
判決
関連法令の解説
この条文は、抵当権者が債務者または物上保証人の占有を変えずに不動産を担保に取り、競売による交換価値から優先的に弁済を受けられると定めています。抵当権は「交換価値を支配する権利」であり、不動産の使用・収益権は設定者(所有者)に留保されます。本判例は、この交換価値が競売妨害目的の占有によって侵害された場合に、抵当権者みずからが妨害排除請求として明渡しを求められるかという、民法369条の保護範囲の問題を扱っています。
身近な例え
ざっくりまとめ
試験対策ポイント
直接自己への明渡しが認められる追加要件:所有者において適切な維持管理が期待できないこと
賃料相当損害金は認められない。理由は「抵当権者はもともと不動産を使用・収益する権限を持たない」から。「使う権利がない者が使えなかった損害を請求できない」という論理を押さえること
関連判例との対比:不法占有者への対応は最判平11.11.24(所有者の妨害排除請求権を代位行使する形で対処)。本判例は占有権原を持つ者への抵当権者自身による直接請求を認めた点が新しい
注意:抵当権設定登記より前に設定された正当な賃借権は競売妨害目的とはいえず、この法理は適用されない
関連法令
関連判例
債権譲渡と抵当権に基づく物上代位
債権譲渡は民法304条1項の「払渡し・引渡し」に含まれない。そのため、債権譲渡と対抗要件具備の後でも物上代位権の行使が可能。 物上代位の差押えが必要な理由は「第三債務者保護(二重払いの危険からの保護)」。債権者間の優劣決定が目的ではない点を押さえること。 抵当権設定者による物上代位権封じを防ぐ趣旨が判旨の核心。「差押え前に譲渡すれば物上代位を免れられる」という抜け穴を塞ぐ判断として理解する。 注意:第三債務者が差押え前に弁済した場合(払渡し)は物上代位不可。債権譲渡の場合と区別して整理すること。払渡し・引渡しは物上代位を遮断するが、債権譲渡は遮断しない。 物上代位の行使要件(差押えが必要)と行使できる対象(賃料・売買代金・保険金等)もあわせて整理しておく。物上代位全体の構造の中で本判例を位置づけること。
転貸賃料債権に対する物上代位
抵当権者は、所有者の直接の賃料債権には物上代位できる(原則) しかし、抵当不動産の賃借人が転借人から受け取る転貸賃料債権には、原則として物上代位できない 理由:賃借人は抵当不動産による「物的責任」を負っておらず、民法304条1項の「債務者」に含まれない 例外:賃借人を所有者と同視できる特別な事情(法人格の濫用・転貸借の仮装など)があれば物上代位可能 注意:この判例は「決定」(最高裁の決定)であり、判決ではない点も確認しておく
物上代位と一般債権者の差押えとの優劣
物上代位と一般債権者の差押えが競合した場合の優劣は、抵当権設定登記と差押命令の第三債務者への送達の先後で決まる 一般債権者による差押えは民法304条1項ただし書の「払渡しまたは引渡し」には当たらない→抵当権者は差押え後でも物上代位を行使できる 対比①:債権譲渡との競合→抵当権設定登記と債権譲渡の対抗要件具備の先後で決まるが、対抗要件が備わっていても抵当権者は物上代位を行使できる(最判平10.1.30) 対比②:転付命令との競合→転付命令が第三債務者に送達される前に抵当権者が差し押さえなければ、転付命令の効力を妨げられない(最判平14.3.12) 図で整理すると:「抵当権設定登記 vs 差押命令の第三債務者への送達」→先の方が勝つ、というシンプルな時系列比較で押さえること
抵当権に基づく妨害排除請求事件
抵当権は換価価値(交換価値)を把握する権利であり、原則として占有・使用収益に干渉できない 不法占拠により競売が妨害され交換価値の実現が困難になる場合は抵当権の侵害と評価できる 抵当権者は「所有者が不動産を適切に維持管理するよう求める請求権」を保全するため、民法423条の法意に従って所有者の妨害排除請求権を代位行使できる(直接適用ではなく転用) 代位行使の場合、抵当権者は不法占有者に対して直接自己への明渡しを求めることができる 注意:本判決は**大法廷判決(最大判)**で、平成3年判例を変更した点が重要 その後の最判平17.3.10は、一定の要件下で抵当権に基づく直接の妨害排除請求(代位構成なし)も認め、本判決を補完している
宇奈月温泉事件
権利濫用の判断においては、①権利者の利益と②相手方・社会への損害のバランス、および③権利行使の目的・態様の悪質さが総合的に考慮される 本判例は日本で初めて「権利ノ濫用」という文言を判決文中で用いた大審院の先例であり、民法1条3項の解釈の基礎となっている 所有権のような強い権利であっても、権利濫用として行使が制限される場合があることを示した 権利濫用の3要素として押さえる:①権利者に対するほとんど利益がない、②相手方・第三者への甚大な損害、③不当な利益獲得目的という態様の悪質さ 注意:民法1条3項が直接適用された判例ではなく、同条が明文化される前の判例であることも押さえておくこと
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