A憲法参政権・社会権
参議院議員定数不均衡訴訟(平成24年)
最高裁判所2012-10-17最判平24.10.17
投票価値の平等定数不均衡参議院議員選挙合区国会の裁量権違憲状態一票の格差
参議院でも一票の格差は許されない!5倍の格差は違憲状態、でも合理的期間内なので合憲
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事案の概要
平成22年7月施行の参議院議員選挙において、選挙区間で議員1人あたりの選挙人数に最大1対5.00の格差が生じていました。原告は、この定数配分規定が憲法14条1項(法の下の平等)が保障する投票価値の平等に違反するとして、選挙の無効を求めました。国側は「参議院には半数改選制度や地域代表的性格があるから衆議院よりも格差が許容される」と主張しましたが、最高裁はこの主張を退けました。ただし直ちに違憲・無効とはせず、「違憲状態ではあるが合憲」という複雑な判断を下しました。
争点
参議院議員選挙において選挙区間で最大約5倍にのぼる定数格差が生じていた場合、参議院の特性(半数改選・地域代表的性格)を理由に投票価値の平等の要請が後退するのか、また当該格差は憲法14条1項に違反するかどうかというのがこの事件の争点です。
判旨
参議院が半数改選制を採るなど衆議院とは異なる性格を持つとしても、参議院も国権の最高機関として民意を国政に反映する責務を負っており、参議院議員選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいとは言えません。本件選挙時点における最大約5倍の格差は、投票価値の平等の重要性に照らしてもはや看過し得ない程度の違憲状態に至っていました。しかし最高裁が選挙制度の構造的問題を指摘した前回判決(平成21年大法廷判決)から本件選挙まで約9か月しか経過しておらず、その間に国会が制度見直しに向けた検討を進めていた事情を考慮すると、改正が実現しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるとまでは言えません。したがって定数配分規定は憲法に違反するに至っていないと結論づけました。ただし国会に対し、都道府県を単位とする現行の選挙制度の仕組み自体を見直す立法的措置を速やかに講じるよう求めました。
【原文】
原文をそのまま4つに整理して引用します。
判旨原文(平成22年選挙・最判平24.10.17)
① 投票価値の平等と国会の裁量
「憲法は、…投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら、憲法は、どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることになるかの決定を国会の裁量に委ねているのであるから、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。」
② 参議院の性格と投票価値の平等
「参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。」
③ 違憲状態の認定と合憲判断
「本件選挙当時、前記の較差が示す選挙区間における投票価値の不均衡は、投票価値の平等の重要性に照らしてもはや看過し得ない程度に達しており、これを正当化すべき特別の理由も見いだせない以上、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたというほかはない。もっとも、当裁判所が平成21年大法廷判決においてこうした参議院議員の選挙制度の構造的問題及びその仕組み自体の見直しの必要性を指摘したのは本件選挙の約9か月前のことであり…選挙制度の仕組み自体の見直しを含む制度改革に向けての検討が行われていたこと…などを考慮すると、本件選挙までの間に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。」
④ 国会への是正要請
「単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる前記の不平等状態を解消する必要がある。」
【原文】
原文をそのまま4つに整理して引用します。
判旨原文(平成22年選挙・最判平24.10.17)
① 投票価値の平等と国会の裁量
「憲法は、…投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら、憲法は、どのような選挙制度が国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させることになるかの決定を国会の裁量に委ねているのであるから、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。」
② 参議院の性格と投票価値の平等
「参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。」
③ 違憲状態の認定と合憲判断
「本件選挙当時、前記の較差が示す選挙区間における投票価値の不均衡は、投票価値の平等の重要性に照らしてもはや看過し得ない程度に達しており、これを正当化すべき特別の理由も見いだせない以上、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたというほかはない。もっとも、当裁判所が平成21年大法廷判決においてこうした参議院議員の選挙制度の構造的問題及びその仕組み自体の見直しの必要性を指摘したのは本件選挙の約9か月前のことであり…選挙制度の仕組み自体の見直しを含む制度改革に向けての検討が行われていたこと…などを考慮すると、本件選挙までの間に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。」
④ 国会への是正要請
「単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる前記の不平等状態を解消する必要がある。」
判決
本件選挙当時は違憲状態に至っていたと認定しつつも、国会の裁量権の限界を超えるとまでは言えないとして定数配分規定は憲法に違反するに至っていないと判断され、選挙無効の請求は棄却されました。
関連法令の解説
憲法14条1項(法の下の平等)
この条文は「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されてはならない」と定めています。選挙における投票価値の平等もこの条文から導かれ、一人の有権者の一票が持つ価値は選挙区にかかわらず可能な限り均等でなければならないと解されています。本判例はこの投票価値の平等の要請が参議院議員選挙においても後退しないことを明確にしました。憲法47条(選挙に関する事項の法定)
選挙区・投票方法等の選挙制度の具体的な設計は国会の立法裁量に委ねられています。ただしその裁量は無制限ではなく、投票価値の著しい不平等をもたらす制度は裁量の限界を超えます。本判例はこの国会の広い裁量権を前提としつつ、5倍という格差は「もはや看過し得ない程度」に達していたと認定しました。
この条文は「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されてはならない」と定めています。選挙における投票価値の平等もこの条文から導かれ、一人の有権者の一票が持つ価値は選挙区にかかわらず可能な限り均等でなければならないと解されています。本判例はこの投票価値の平等の要請が参議院議員選挙においても後退しないことを明確にしました。憲法47条(選挙に関する事項の法定)
選挙区・投票方法等の選挙制度の具体的な設計は国会の立法裁量に委ねられています。ただしその裁量は無制限ではなく、投票価値の著しい不平等をもたらす制度は裁量の限界を超えます。本判例はこの国会の広い裁量権を前提としつつ、5倍という格差は「もはや看過し得ない程度」に達していたと認定しました。
身近な例え
クラス委員を選ぶとき、1組は10人で1票、2組は50人で1票では不公平。参議院でも同じように平等が必要という話です。
ざっくりまとめ
「参議院は衆議院とは違う性格だから、一票の格差をもっと許容していいじゃないか」って国側は言いたかったわけ。でも最高裁は「参議院の選挙だからといって投票価値の平等の要請が後退するとは言えない!」って断言したんだよね。5倍の格差は違憲状態と認定したんだけど、前の最高裁判決から9か月しか経ってないから国会が是正する時間が足りなかった、ということで「違憲状態だけど合憲」という結論になったんだ。「違憲状態」と「違憲・無効」は別物だってのが超重要!
試験対策ポイント
「違憲状態」と「違憲・無効」は別概念。違憲状態と認定されても、是正のための合理的期間内であれば直ちに違憲・無効にはならない
本件では前回判決から約9か月という具体的な期間が合理的期間の判断材料とされた点を押さえること
注意:「これまで違憲状態を認定したことはない」は誤り。平成8年判決・平成24年判決ともに違憲状態を認定している
国会への是正要請として、一部の定数増減にとどまらず「都道府県を単位とする選挙区の仕組み自体の見直し(合区)」を求めた点も重要。その後の合区実施(平成27年改正)の布石となった判例
関連法令
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